『眠れる姫君』―クレミンversion
私がよく見る怖い夢は、一人ぼっちでお母さんを呼ぶ夢だった。
気がつくと私は、今まで自分の育った山奥にある家に立っている。周りには私以外誰もいなくてしーんとして薄暗い。私の体は幼くなっていて、お母さんの名前を呼んだ。お父さんは私が物心つく前に亡くなっていたから、いつも助けを求めるときは決まってお母さんの名前を呼んでいたの。母と娘で住むには少し大きすぎるこの家は、一人では心細いことこの上なかった。声を上げてお母さんを呼ばなければ、どこからともなく薄暗い闇が来て、私を飲み込みそうで怖い。友達や他の人に助けを求めることはほとんど不可能に近かった。だってここは山奥で滅多に人は通らないし、友達だって麓に降りて近くの村まで足を運ばなければ会えなかったから。幼い私に、一人で行くには途方もない話。だから、必死にお母さんに助けを求める。
今までだったらそこで悪夢から醒めたけど、最近はこの続きを見る。
気がつくと私は、牢屋の中にいる。体も元の大きさに戻っていて、必死に握っていた杖に力を込めていた。お母さんの名前を呼んでいたはずなのに、いつの間にか助けを求める相手がクレスさんに変わっていて、喉が嗄れそうになるまで彼の名前を何度も何度も呼んだ。
―…クレスさん、クレスさん、どうか私の元に来てください―
愛しい、私が生まれて初めて恋をした、想いの人を何度も呼ぶ。
―クレスさん、クレスさん、あなたさえ来てくだされば、お母さんを助けることが…―
今にもこの暗く狭い闇に囚われそうな私を、救えるのは彼しかいないの。同じように牢に閉じ込められた母も彼なら助けることができるともそう思えた。夢の中のもう一人の私がもう助からないことを告げるけど、私はそれに構わず彼の名前を呼び続ける。
―クレスさん、クレスさん、クレスさん、助けて…―
最近はいつもここで夢から醒める。
ミントはぱっと目が覚めて、勢いよく飛び起きた。起きてもなお鮮明に目に焼きついている映像に、悪寒が走る。ここのところほぼ毎日のように見る夢は、ミントの心を確実に蝕んでいた。いや、ミントの思いが逆にこの悪夢を呼び起こしているだけなのかもしれない。
ダオスとの戦いは終盤に近づいている。それは仲間の誰かが言わずとも分かる事実だった。このパーティは、みんなが同じ時代に生きているというわけではない。この旅が終わってしまえば、会えない仲間もいるのだ。だから、みんな自然とこの旅で遣り残したことがないように、各々考えていることが多かった。そして、それはミントとて例外ではなかった。彼女もまたこの旅の中ではっきりさせなければならない事実があった。
―母の安否―
枕元にいつも寝るときにお守りのようにして置いてあったユニコーンのイヤリングが、月明かりに照らされて光る。私は無意識のうちにそれを握り締めた。これが今自分の手元にあるということが何よりも証明していた。あんなに誰よりもやさしいクレスさんが、頑なに母のほうへ行くことを拒んだこともそれなら説明がつく。でも、あれ以来聞かなかった。自分が懸命に事実を知りたいと申し出れば、彼は誰よりも心を痛めて真実を話してくれるだろう。それでも、聞けなかった。彼がこのイヤリングを落としたときから、全てを悟ったのに。事実を素直に受け入れたくなくて、優しい彼にウソをつき続けてもらった。今だって心のどこかで、母は生きているんじゃないかって期待している。でも、彼に真実を聞いてしまったら、その希望さえ手放すことになってしまう。
彼は残酷なことをできるような人じゃない。だから、明日彼に「お母さんはどこかで生きてますよね?」って聞いたら、きっと悲しそうに頷いてくれる。私はずっとそんな彼の優しさに甘えて、それを支えにして旅を続けることができたの。でも、それも限界に近づいている。ダオスと戦う前に、全ての心と向き合わなければ、きっと旅が終わってからの生活に何もかも絶望してしまう。クレスさんにちゃんと聞こうと思っているのに、もう一週間もそのタイミングを逃したままになっている。それに加えて、先ほどような悪夢まで見るようになってしまった。
その異変に真っ先に気づいてくれたのも、彼だった。野営の時に魘されている私をすぐに起こしてくれたり、体調を常に気にかけてくれたり、戦闘のときは普段以上に慎重に動いくれていたのも分かった。明日一日を丸々休息に当てようと言い出したのも、常に先を急ぐ彼からの言葉だった。それが私のために言ってくれたということに気づいて、嬉しいような申し訳ないような気持ちになる。アーチェさんも気づいていた。同室だということもあってか、私があまり寝てないことを分かっているらしい。「もー、ミントは女の子なんだから無理しちゃ駄目だよ」って今朝も言ってくれた。アーチェさんが味方につけばどうにでもなるようで、クレスさんの休息の提案がすぐに受け入れられたのも、アーチェさんのお陰だということをチェスターさんが言っていた。
少しでも頭が冷えるように夜風に当たろうと思い、薄手のカーディガンを羽織って女性用にあてがわれた寝室を出ようとドアに手をかける。一度振り向いて、部屋全体を眺めた。ベットの上でアーチェさんもすずちゃんも気持ち良さそうに寝てるので安心する。
「私が眠れない分まで、ぐっすりとおやすみになってくださいね。」
誰ともなくそう呟いて寝室を後にした。明日が休息の日でなければ、夜中に出歩いて夜風に当たりに行くことなど到底できなかった、自分を気遣ってくれたクレスさんにも心の中で感謝する。下に降りるために廊下の突き当りを曲がったところで、私は思わずぎょっとする。階段へと続き廊下の隅に配置されている花と椅子。その椅子の上にクレスさんが頭をうな垂れて眠っていたのだった。
ミントは慌ててクレスに駆け寄った。近寄ってみると、どうやら本当に寝てるだけのようで特に何もないらしい。かすかな寝息が聞こえ、いつもはしているはずの鎧を取っていたので、肩が少し上下しているのも見て取れる。ほっとするが、こんなところで寝ていては、風邪を引いてしまうかもしれないと思い当たる。ミントは夜中なので周りに迷惑にならないように、できるかぎり静かな声でクレスを起こした。
「クレスさん、クレスさん、起きてください。」
「んー…、ミント…?」
ミントが呼びかるとすぐにクレスは目を覚ました。目を擦りながら、クレスは椅子から立ち上がった。クレスは指で頬を掻きながら、焦ったような恥ずかしいような顔で呟いた。
「おっかしいなー、すぐに起きるつもりだったんだけど…。」
「クレスさん!」
「はい!」
突然のミントの鋭い呼びかけに、クレスは条件反射でそう答えた。恐る恐る視線を下に向けてミントの顔を見た。ミントは少し怒ったような顔をしていた。
「こんなところで眠られては、お体に良くありません。お風邪を召されてでもしたらどうするんですか?」
ミントにしては強い口調だったが、それがクレスのことを本気で心配しているものからだと知り、クレスは微笑んだ。
「ごめんね、ミント。心配かけて。」
「いいえ、私こそすみません…。」
それっきりミントは黙り込んだしまった。クレスはしばしどう言おうかと躊躇ってはいたが、やがて口を開く。
「ミントはこんな遅くにどうしたの?まさか僕を起こしに来てくれたわけじゃないんでしょ?」
「はい、寝付けなかったので夜風に当たろうと思いまして。」
ミントの言葉に、僕は言いようのないもどかしさに打ちひしがれた。ミントがここ最近、何かに悩み苦しんでいるのは知っていた。アーチェもそれには気づいているようで、昼間も「ミント昨日もよく眠れてなかったみたいだよ?クレス、あんたがちゃんと気遣ってやんなきゃ駄目じゃん。」と小突かれたばかりだった。けれど、夕時になってもどうやればミントの苦しみや悲しみを取り除けるのか考えても答えは出ず、夜になってもそれは同じだった。しかし、このまま何もしないまま素直に寝ることもできず、僕はなんとなくミントがここを通るような気がしてここでずっと彼女を待っていたんだ。結局はミントに起こされてしまう形になっちゃったけど。
「けど、アルヴァニスタといっても女の子が夜出歩くのは危険すぎるよ。やめておいたほうがいいんじゃないかな?」
彼女の思いを優先することよりも、彼女を心配する気持ちのほうが勝ってしまった。アルヴァニスタは整備されていて治安が良い国に入るけど、夜は魔物も活発に動くし、悪い奴らに絡まれることは少なくないのだ。ましてや、ミントは法術師で相手を攻撃する術がない。そんな彼女を黙って外に行かせることはできなかった。案の定ミントは、俯いて残念そうに瞳を細めていた。
「おっしゃるとおりですね、夜風に当たりに行くのはやめておきます。部屋に戻って眠りますね。おやすみなさい、クレスさん。」
頭を下げるのと同時に金髪の髪がさらっと揺れた。夜の明かりに照らされたミントは、いつもとは違う美しさを秘めていた。ゆっくりと僕のもとから彼女が遠ざかる。直感的なものと、そして僕自身の想いが彼女と離れるのを拒んだ。
「待って、ミント!」
夜中なのに反射的にそう叫んでしまった自分にはっとする。ミントが振り向いてくれたはいいが、何を言うかは全然考えてはいなかった。ただもう少しだけ、ミントと一緒にいたかったから。
「…その……、…ミントは夜風に当たりたいんだよね?」
このときすでに僕はどうやったらミントを慰められるのかを考えずに、どうやったら一緒にいられるかを考え始めていた。
「だったら、僕も…、僕も付き合うよ!それなら、ミントに危険が迫っても僕が守ることができるから。…それじゃあ、ダメかな?」
不安な気持ちでミントの反応を窺うと、彼女は薄明かりでも分かりほどにこやかに笑っていた。僕もつられて笑顔になる。ミントの心の底から笑った顔は、ここ最近見ることができなかったから、尚更嬉しい。
「クレスさんがよろしいのでしたら、お願いします。」
夜の青い闇の中で、顔を綻ばせてそう言ったミントが、誰よりも愛しいんだと僕は改めて感じた。
アルヴァニスタの夜は考えていた以上に肌寒くて、静かで、暗かった。足音だけがやけに辺りに響く。一瞬先ほどの悪夢の光景が頭をよぎったけど、私がそれを深く思い起こす前に、私の肩に暖かい重みがかかる。
「そんな薄着じゃ、ミントのほうが風邪を引いてしまうよ?僕のでよかったら、羽織っておきなよ。」
「ありがとうございます、クレスさん。」
私が薄手のものしか着てこなかったことを後悔する暇も与えず、クレスさんは私の肩に上着をかけてくれた。彼が先ほどまで身につけていた温もりと彼の優しさが体を温める。ううん、体だけじゃない、さきほど不安に思っていた心まで全部彼が温めてくれた。彼が側に、隣にいるだけで、静かで暗いと思っていた夜は、こんなにも心に落ち着きと安心を与えてくれる静寂に変わる。
「わあー、星がすごく綺麗だよ、ミント!」
隣では私がこんな風に思っているとも知らずに、クレスさんが感嘆の声を上げていた。つられて私も夜空を見上げる。夜空はまるで黒いキャンパスに銀色の滴が満遍なく散りばめられたような星空だった。もし、ここで流れ星が流れるのを見ることができたら、ここで輝いている星たちが本当に叶えてくれそうだった。
「ええ、本当に綺麗ですね、クレスさん。」
彼の言葉に同意して、私は夜の輝きに釘付けになった。
僕達はそのまま無言で、満天の星空を眺めていた。いつも戦いの日々で、常に何かに追われるように時間を過ごしてきたから、こんな風にミントと共にゆっくりと星空を眺めていることがなんだか嬉しかった。ミントの息づかいがかすかに隣から聞こえてきて、金髪の髪が夜風になびいてきらきらと夜の闇に映える。夜空を見上げていたはずなのに、いつの間にかミントに見惚れている自分にはっとして、そんな自分に苦笑するしかなかった。ミントが隣にいてくれるから僕は安心できる。この星空も、アルヴァニスタの夜の街並みも、君がいるから鮮やかに彩が燈って温かな場所へと変わる。…本当の意味で守られてるのは、僕なのかもしれない。
「ねぇ、ミント。疲れたり、辛かったりしたら、いつでも僕達に相談してくれて構わないんだよ?」
守られていると感じるからこそ僕は、君を守ってあげたいと願わずにはいられない。
その言葉にミントは夜空に向けていた視線を僕の方へ移した。
「…クレスさん。」
お互い見つめ合うような形になってしまって、僕は少しだけ照れてしまう。彼女に見つめられるだけで、本音がすんなり喉を通って出てきた。
「ごめんね、ミント。本当はもう一週間くらい前から、君が何かに悩んでいるのを知ってたんだ。僕は不器用だから、ミントがどうやったら元気になれたり、慰められたりするのか分からなくって、結局何もできなかった。」
なんとなくミントの顔が見れなくなって、僕はミントから視線を逸らした。見上げれば、こんなにも星は輝いていて、時だって刻々と流れてる。だけど、僕だけが君の事になると一歩も動けなくなってしまう。
「今だってミントのためにどうしてあげたらいいか分からないんだ。」
こんなんじゃ、ダメだよね、と自分を自嘲した言葉は、夜風と共に闇に紛れてしまった。
それまで黙って僕の話を聞いていたミントはゆっくりと口を開いた。
「クレスさん、私はもう十分あなたから元気をいただきましたよ?」
「……え?」
一瞬反応が遅れたのは、ミントの言葉の意味がすぐに飲み込めなかったことと、彼女の優しい微笑みに一時心を奪われてしまったからだった。
「でも、僕は何もしていないじゃないか。」
彼のその悲しげな一言に、私も顔を曇らせた。
クレスさんは真面目だから、人一倍考えすぎてしまう。優しすぎるから、毎日人に親切を惜しまないのにそれでも足りないと思ってしまう。
「私は知っていますよ。」
私はまっすぐにクレスさんを見上げて、そしてもう一度彼に向かって微笑む。
「クレスさんがこの前からずっと私のことを気にかけてくれていたことも、今日だって私のために夜遅く宿屋を出て、この星空を一緒に眺めてくれたことも知っています。クレスさんは何もしてないなんてことないんですよ。」
私はそっとクレスさんの手に触れた。言葉だけでは言い表せられないこの気持ちも、どうかこの手を通してクレスさんに伝わってほしいと願いを込めて。
彼の表情は一度穏やかなものに変わって、でもそれはすぐに何かに苦悩する表情にかき消されてしまった。マントが風に激しく翻る音と暖かいものに全身を包まれる感覚がして、今の彼の表情を確かめることは叶わなくなってしまった。クレスさんは優しく、けど背中に回された腕だけは力強く、私を抱き締めていた。嬉しさとこういうことに慣れていない恥ずかしさから、自分の体温がどんどんと上昇していくのがやけにはっきりと分かる。
「それでも、…それでも僕はミントの痛みを取り除けたわけじゃない!ミントはやさしいから―…、だからそんなことが言えるんだ。僕がいくらミントを大切に思っていても、君の法術みたいに傷を完全に治したりすることは、僕にはできないんだ!!」
抱き合っているせいでクレスさんがどんな顔をしてるのか見えなくて、彼の想いを知りたいと思って聞こえてきた声は心の悲鳴だった。
「クレスさん、法術だって万能ではありません。いくら傷を癒せても、それまでの痛みを取り除くことはできませんし、傷負う前の状態にしてなかったことにはできないんです。」
完全に魂が肉体から離れてしまった人を生き返させることができないと同じように、法術を使っても取り返しのつかないことはたくさんある。
「……。」
「でも、傷を負った人の痛みを少しでも和らげたいと思うから、私達法術師はこの力を使って人を癒し続けるんだと思うんです。」
クレスさん、アーチェさん、クラースさん、チェスターさん、すずちゃん―みなさんが好きだから、例え戦う力がなくてもこの力でみんなを守りたいとそう思えた。
「…ミントはもう大丈夫なの?」
心配そうに私を気遣う声が耳元から聞こえてきて、思わずドキッとした。私がそんな風に感じたことをクレスさんに悟られまいと、慌てて彼の話に乗る。
「私はクレスさんのお陰で、もう平気です。だから、そんなにご自分ばかり責めないで下さい。」
私のことでクレスさんまで悩まれて、苦しい思いをしてしまうのは嫌だから。
「そっか、良かった。」
私の返事を聞いて、クレスさんは安心したように息をついて、ゆっくりと回していた腕を解いた。私はそのことに少し残念に思いつつも、あの状態でいるのは恥ずかしい気持ちもあって少し安堵する。けれど、恥ずかしかったのはクレスさんも同じらしい。私より明らかに赤い顔をして、私からわざと視線を逸らしている。
「その、い、い、いきなり……抱き…つ…たりして、…そ、その、ごめん!」
更に真っ赤になりながら律儀に謝ってくる彼に、私は複雑な思いで彼を見る。私もクレスさんに抱き締めてもらって嬉しかったから、謝らなくても良かったのに。けれど、私もそんなことが口に出して言えるはずもなく、この微妙な関係を歯痒く思った。
「そ、それじゃあ、そろそろ宿屋に戻ろうか?」
居た堪れない雰囲気に未だに顔を赤くしたままのクレスさんは、そう提案をしてきた。
「ええ、そうですね。」
なぜか私にもそれが伝染したようで、恥ずかしくなってその意見に従う。
「あ、あのさ」
「?」
クレスさんが一歩踏み出しかけて、慌てて振り返って声とともに差し出してきたのは彼の手だった。私は彼の意図を掴み損ねて、首を傾けてしまう。決意したように真摯に見つめてきた彼に、心臓がまた早鐘を打ち始める。
「宿屋に行くまでの間、足元が暗くて危ないから手を繋いだほうがいいと思って。そ、その嫌だったらいいんだ。」
急いで手を引っ込めようとする彼に、私も頬を朱に染めながら言葉を紡ぐ。
「是非、お願いできますか?」
「うん!」
私の言葉に顔を綻ばせて、彼は私の手を力強く握ってくれた。彼が手を繋ごうと言い出したのは、危ないからという理由だけではないような気がした。じゃなかったら、なんでクレスさんは宿屋に着くまでずっと緊張したように押し黙ってて、手から伝わる体温はどんどん上がっていくのでしょう。
結局、今日もクレスさんにお母さんのことを聞くことも、旅をしていく中でどんどん大きくなっていった彼への想いを告げることもできなかったけど、今はこのままでもいいのかもしれない。
私のことを自分のことのように真剣に悩んでくれるクレスさんが、人一倍奥手なのに自ら手を繋いでくれたクレスさんが、私はさらに好きになった。
今この想いを口に出して言うことも、お母さんの事を聞く勇気もないけど、きっとどちらもそう遠くない未来に私はクレスさんに伝えられると思うから―…。
宿屋に戻ってから見た夢は、クレスさんが私を迎えに来てくれた夢だった。
『おまけ』
「もー、クレス起きるの遅すぎ!休息だからって今何時だと思ってるの!?クレスの分の朝ご飯、チェスターさえ邪魔しなかったらこのアーチェさんが食べちゃってたわよ!」
「ふぁ〜。ごめん、アーチェ。昨日寝たのが遅かったんだ。」
「へー、ミントも今日すごく眠そうにしてたけどさ、なになに?二人でそんな夜遅くまで何してたわけ??」
「別に、アーチェが面白がるようなことは何も…。ね、ねぇ、ミント?」
「…ええ、そうですよ。クレスさんのおっしゃるとおり何もありません。」
「ふ〜ん(すごく怪しい)。だったらなんで、クレスもミントもそんなに顔が赤いの?」
「あ、赤くなんか!!」
「そ、そうですよ!アーチェさん、からかうのはやめてください!!」
「若いっていいね〜。」
翌日、寝不足の二人は、アーチェを始め仲間達に散々冷やかしと夜遅くに何をしていたのかを嗅ぎまわられて、ある意味昨日よりも恥ずかしい一日を過ごしましたとさ。めでたし、めでたし。
あとがき
やっと、大好きなクレミン話を書くことができました。うれしいです!リファラもすごく好きだけど、クレミンは、特にクレスは、自分の中でテクニカルヒットした初めてのキャラなので、思い入れがすごく強いです(一周しかプレイしてないのにも関わらず)。
だから、クレミン好きが増えるように頑張るぞー!!
今回のお話の裏テーマは「眠れない彼女(好きな人)にあなたはどんなやさしさをあげますか?」って感じです。進んではいないんだけど、リファラバージョンも書きたいと思ってます。クレスとリッドって優しさの類が違うから、考えるのも書くのも面白いです。
時間的にはアーリィの町に着く5日前だと思ってください。
執筆:2007年6月2日