青いを追いかけて

 

 

 

 

 

 

 

 

青い鳥を探してた。

ずっとずっと探してた。

けれど、見つからなくて、

てっきり私の前には現れないものだと思ってた。

 

 

 

目を開けると、そこは見慣れた場所だった。ラシュアンの見晴台―大人三人が登るのが一杯の狭いその場所に、ファラは一人横たわっていた。

今まで眠っていてしまっていたのだろうか?

寝起き特有のぼんやりとした意識と倦怠感を何とかかみ殺して、伸びをしながら辺りを見回す。辺りには人っ子一人見あたらない。太陽は高く、まだ村のみんなは仕事に精を出している時間帯だ。ファラも慌てて体を起こした。一人だけ寝てられない、そう思って見晴らし台を降りようとしたとき、何者かとふと目があった。

「青い鳥…?」

これが真っ青な空の中を飛んでいたら見分けがつかない、と思えるくらいには色鮮やかな鳥だった。それくらい周りの森の背景から、くっきりと空を切り取ったかのように美しい。それがどこか優しげに眼を細めるときの幼馴染の瞳の色にも似ているような気がして、そうぉっと両手で包むように掴もうとした。

バサッ

ほとんど無意識の行動に、しかし、その鳥はその手を拒むように青空に舞う。

「待って!」

そのあとは無我夢中だった。4,5段あったはずの梯子を一気に飛び降りて、その鳥の後を追って走る。鳥一匹を追うことなんて不可能なはずなのに、目はしっかりとその鳥の動きを追っていた。

どうしてかな?

どうしてなんだろう?

あとから自問も追ってくる。

 

でも、あの鳥を追いかけなきゃいけない気がするんだ。

 

 

 

 

どれくらい走ったのだろう?

息を切らす感覚と共に突如として視界が開ける。辺りの景色は、見慣れたラシュアンの森ではなく、商人たちで賑わうバロールの街に変わっていた。それと同時に鳥の姿も見失ってしまう。

(確かに後を追ってきたはずなのに…。)

あの鳥の姿を探してもう一度空をくまなく探していると、後ろから声をかけられた。

「…ファラさん、何か探しているんですか?」

どうやら困っているファラの様子を見かねて、声をかけてくれたらしい。

「青い鳥を探してるの!ねぇ、チャットは青い鳥見なかった?」

(完全に見失っちゃった)

いくら空を見渡しても見つからないことに動揺しながらも、ファラは縋るようにチャットに問いかけた。

「青い鳥、…ですか?」

「そうなの!すごく綺麗な色をしている鳥なんだけど、見なかった?」

問いかけられて考え込むチャットに、ファラはさらに畳みかけた。自分でもなんでこの少女に必死に取りすがっているか分からない。でも、今助けを求められそうなのは、この少女だけのような気がした。

「ああ、あの鳥ですね!」

思い出したようにチャットは顔を上げ、目を輝かした。

「あの羽がすらっと伸びた鳥!綺麗でしたもんね。」

そして、ファラがさっきまで目指して走っていた方向を案内する。

「ここをずっとまっすぐ行けば、その鳥に会えるはずですよ!」

言われて、最後の方の言葉は走りながら聞いた。こっちには風昌霊の谷があるはずだ。あの鳥もきっと心地よい風を求めて、風昌霊の谷に向かったに違いない。

 

 

 

 

風昌霊の谷の入り口まで一気に走り切ると、またも見知った人物に出会った。

「レイス?!」

驚いて足を止めたのはファラの方だった。彼女の声にレイスも気づいて、ファラの方を振り向く。

「君は相変わらずだね。そんなに慌てて走ってきてどうしたんだい?」

そんな慌てた様子の少女に動じない彼も相変わらずであったが、言われてファラは当初の目的を思い出した。

「そう、青い鳥!私、青い鳥を探してここまで走ってきたの!!」

「どうして青い鳥を君は探しているのかな?」

問いかけられて固まった。どうしてそれを探しているかなんて自分でも分からない。

「それは…、」

「私は君に青い鳥は必要ないと思うよ。」

「え?」

自分が行っていることを率直に切られて、呆然とするしかなかった。目があった瞬間、あの鳥に触れたいと思った。けど、いざその感覚を他人から否定されると、反駁する言葉が思いつかない。

「青い鳥がいれば、君は確かに幸せになる。けど、君はそんなものがなくても自分の力で十分幸せになれるんじゃないかい?」

ファラを認めてくれるその言葉が、レイスから発せられたことが嬉しかった。だが、何かが違う。幸せになりたいと思って、あの鳥を捕まえようと思ったわけではない。

それに、とレイスは続けた。

「青い鳥は誰かの手に囚われる瞬間、幸福を与える代わりに自由を失くすんだ。君が幸せになるために、青い鳥は君に一生縛られることになるんだよ?空は飛べなくなる、自由にどこかに行くこともできないんだ。ファラ、君はそれでもいいのかい?」

青い鳥を労わるような言葉に心が揺れた。

(あの感覚は、間違いだったかな?)

私が追いかけて捕まえたせいで、逆にあの鳥は不幸になるのかもしれない。

「私、捕まえようなんて思ってない。あの鳥に触るだけでいいの!そうしたら、私レイスが言うように自分でちゃんと幸せになるから」

そうか、レイスが納得したように頷くと、彼の姿が消えた。

「!」

否、青い鳥の姿に変わった。

「青い鳥はレイスだったの?!」

驚いて歓声を上げながら、その鳥を間近で眺める。ぴんと伸びた羽が綺麗だ。チャットが言った通りである。その羽に触れそうになったところで、ファラはようやく気付いた。最初に見晴らし台で見た時よりも色が濃い。最初のあの鳥が昼の明るい空を映し出すような色ならば、こちらの青い鳥は夜明け前の深い青である。

『ファラ、私も青い鳥だ。君が最初見たものとは違うかもしれないが、私ではダメかな?』

青い鳥が―いや、レイスがしゃべる。

「でも、捕まえちゃったら縛られるって…レイスがさっき言っていたじゃない。」

「私は大丈夫さ。私の羽なら君を乗せられる。」

そういうレイス―青い鳥の羽は確かに大きく。最初に会った時の鳥に比べて大きさ自体が別格だった。ファラが捕まえたとしても、その大きな羽でファラを乗せることができるし、一緒に行きたいところへ行けるはずだ。

よく手入れのされた深い青をそっと撫でる。

きっとあの鳥では不可能だ。あの大きさではファラを乗せることは不可能だし、レイスの言うようにあの鳥の優しさに甘えて縛ってしまう。

「でも、もう一度あの鳥に会いたいの」

口に出した素直な気持ちは、確固としていて揺るぎない。

あの鳥を捕まえようとまでは思わない。もう一回だけ、触れるだけでいい。

ううん、きっとあの鳥に、あの優しい瞳で慰めて欲しいだけなんだ。

 

気づいたら彼の体から手を放して、また走り出していた。

「ファラ、健闘を祈るよ」

優しい声援を、遠くの残響で聞いた。

 

 

 

 

青い鳥が飛んで行った方向を追って走り続けると、ファラが追い求めていたあの鳥と見知った顔を同時に発見する。自然と足にも力が入り、僅かに速度を上げる。目を凝らしてみても、やはり空と同化したような鳥を見間違えるはずもなかった。

(次は絶対、触るんだから!)

走る態勢から、鳥に向かって飛びかかる姿勢に状態を移行する。

だが、残念なことに今にも躍りかかってくるファラの勢いに驚いたのは、あの鳥だけではなかった。

「!!わあぁああ!?」

見知った顔―キールが驚いて腰を抜かす。キールが崩れるようにして地面に尻もちをつくと、彼の肩に乗っていた鳥もその衝撃に慌てて飛び去ってしまった。

「あー!あともうちょっとだったのにっ!!」

ぎりぎりのところで飛び掛かる勢いを殺すことに成功したファラは、そのまま飛び去ってしまった鳥を眺めながら逃げられたことを悔やむ。

「ファラ!いきなり、びっくりするじゃないか!?」

尻もちをついたままのキールがほとんど悲鳴に近い抗議を上げる。その姿は何ともかっこ悪いのだが、十分な怒気は伝わってきた。

「ごめん、ごめん。」

そう言ってファラはキールを起こすのを手伝った。

「私ね、あの鳥をずっと探してたんだ」

あと一歩だったんだけど。

空を眺めながら言うファラには、再度ありありと悔しさが滲んでくる。

「馬鹿馬鹿しい!あんな鳥、希少でもなんでもないぞ」

え?と目を見開いたファラに、佇まいを直しながらキールは言い募った。

「だから、探すこと自体そもそも無駄な労力と言ってるんだ。青い鳥は、色が珍しいだけで、それ以外の特徴も何もない鳥だ。おまけに、鳥類でも怠惰な鳥として有名で、ほとんどの時間を飛行に費やすような愚かな鳥なんだ。幸福の象徴とも言われているが、科学的根拠だって未だ証明されていない。そんな鳥、追いかけるだけ無駄だろう?」

レイスも言った、ファラには必要ない、と。

キールも違った角度で、見方で、レイスと同じように言っているのだ。

それでも、何回言われようとも、ファラは追いかける足を止めようとは思わない。

「ありがとう、キール」

鳥が飛び去ってしまった方向を確認して、ファラは足を踏み出す。

「それでもね、私追いかけたいんだ!」

明るく宣言すると、また走り出す。

キールはそのあと何も言わなかったけど、きっと呆れたんだろうとファラは勝手に解釈した。

 

 

 

 

 

 

 

走って、走って、走って。

気づけば真っ暗な空間にファラは足を踏み入れていた。

果たして、こんな真っ暗な場所にあの青い鳥もいるのだろうか?

右も左も分からない暗闇に、さすがのファラも足を止める。

ファラにとって、暗闇は恐怖だ。特に、一人の時ほど恐ろしいものはない。

その恐ろしさに一人身を縮こまりそうになった時、小さな足音が耳に届いた。

自分の手さえ見えないほどの暗闇だ。誰かが近くに来ていてもきっと分からない。目がほとんど頼りにならない状況で、音のする方に一歩ずつ近寄き、目を凝らしてみる。

刹那、自分の周りの空間に光が差した。

いや、自分の周りがキラキラと輝きだした。

真っ白に塗りつぶされた空間とともに浮き上がったのは、少女の影だった。

「ファラ!」

「メルディ!」

お互い姿を認めて声を掛け合う。どうやら足音の相手は、メルディだったらしい。どちらかともなく抱き合って、自分たちの存在を確かめ合うと、自然と先程の恐怖も治まっていた。

「メルディな、ファラが見せたいものあるよ!」

そう言って少女は少々強引にファラの手を引っ張る。

メルディはまるで道でもあるかのように暗闇の中をすらすらと進んでいくので、ファラもそれにつられて一緒に歩いていった。

やがて、暗闇の中にも関わらずたくさんの人たちの集まりに遭遇した。

フォッグ、アンデレ姫、ロエン、フランコ師範、パオロさん、カトリーヌとピエール、マゼット博士、アイラ、ボンズ、ガレノス……。本当にたくさんの群衆だ。

「みんな、どうしてこんな場所に?」

連れてきたメルディに不思議に思って問いかけると、少女はにこにこと笑ったまま問い返す。

「ファラが青い鳥探してる、キールからそう聞いたな!」

そして、その群衆の真ん中に立って両手を広げた。

「メルディも、みんながファラに助けてもらった人たち!」

メルディが歓喜の声を上げた瞬間、みんなの姿が青い鳥に変わる。

暗闇のなかにぽつぽつと青が輝き、そして舞った。

それは闇夜に浮かぶ青色の花火を見ているようでとても綺麗な光景だった。

メルディだけが鳥に姿を変えず、種明かしをした。

「ファラにとって、きっとみんなが青い鳥。ファラを通して、幸せになった人、助けてもらった人、嬉しくなった人、みんながみんな青い鳥になることができるよ!」

だから、メルディも青い鳥になる!

嬉しそうに笑うメルディがとても愛らしい。

「ファラが探してる鳥はいるか?」

改めて聞かれ、メルディがあの鳥を探すために協力してくれたことにやっと気づいた。

ざっと数えただけでも、50羽はいるだろうか?

一口に青い鳥と言っても、やはり一羽一羽の彩は違うらしい。それはきっとレイスの羽が深い青だったのと同じように、みなそれぞれの色にわずかな違いがあるのだろう。

透き通るような空の色を頭の中でイメージしながら、真上を飛び交っていく鳥たちと比較していく。

だが、いくら粘ってみても、目的の青い鳥は見つからなかった。

「ごめん、メルディ。…この中にはいないみたい」

ファラが落胆を隠しきれない声で告げる。すると、メルディの顔も曇った。

「そっか、メルディこの中いると思ったよ。でも、違うか」

「ありがとう。私もう少し探してみるよ」

こんな風に、知っている人が青い鳥なのかもしれないし。

ファラがそうやってメルディに笑いかけた瞬間、暗闇が開けて今度の景色はミンツへと変わっていた。

 

 

 

 

 

さっきまで傍にいてくれたメルディの姿もなければ、見知った人の集まりもない。すっかり学生で賑わった雑踏に紛れ込んで、ファラは一瞬自分の目的を忘れそうになった。

(あ、そっか、青い鳥!)

思い出したはいいが、この後どうしたらいいかも分からない。何しろ手がかりがないのだ。いつもは飛び去ってきた方向を目指して走っていたけれど、今回ばかりは自分がどの方向から来たのかさえ分からなかった。

(やっぱりここは、聞き込みかな?)

思い立って、いかにも鳥に詳しそうな人を探す。行きかう人々を見ているうちに、ファラはまたしても人混みの中からチャットを見かけることになった。

「チャット!」

「ファラさん、ちょうど良かった!今、あなたを探していたところだったんですよ」

青い鳥は見つかりましたか?

最も気にしていることを率直に尋ねられて、ファラは一瞬言葉に詰まった。

「…まだ、なんだ」

いつもの明るい顔で笑おうとして、自分でも少し笑顔が引きつるのが分かった。

青い鳥を未だに見つけられないという事実が、少し心に刺さる。それがどうしてかは分からなかったが、自分でもここを突っつけばひどく落ち込んでしまうような気がした。

しかし、そんなファラの些細な表情の変化には気づかなかったのか、チャットは顔を怪訝にゆがめる気配もない。

「僕、ファラさんが探していた鳥、見つけたんですよ!」

今まで、これほど有力な情報があっただろうか?

気づいた時には、誇らしげに胸を張るチャットに詰め寄っていた。

「どこに!どこにいたの!?」

「ちょ、ファラさん、落ち着いてくださいってば!!」

危うく首が閉まりそうなほど肩を揺らしていたことに気づいて、慌ててチャットを解放する。少女がしばし咳き込むと、涙を滲ました目で抗議してきた。少しやり過ぎたらしい。

えへん、チャットは再度仕切り直すように咳払いすると、ファラを指さしてこう言った。

「ファラさんが走り去った後見たんですよ。寄り添うようにして、ファラさんの後ろについてまわる鳥を」

ほら、今も後ろにいるじゃないですか?

言われて、そうぉっと後ろを振り向く。

ちょうどファラの目線の高さに、青い鳥は羽ばたいていた。

目と目が合う。

温かいような、癒されるような、懐かしいような気持ちがゆっくりと心になだれ込む。

あの時、確かにラシュアンの見晴らし台で見かけたのは、この鳥だった。

そして、ずっとずっとファラが追いかけていた鳥も、この鳥だった。

自然と、手が伸びる。

触れそうになったところで、またしてもその鳥は空高く舞い上がった。

「行かないで!」

今度こそ戸惑うことなく、飛び出す。走りすぎたせいで足は随分と痛くなっていたが、痛みが気にならなくなるほどその鳥への思いは募っていた。

 

 

 

 

 

ミンツからずっと走って、遠くにラシュアンの村と森が見える距離を走ってきたころ、またしても唐突に鳥の姿を見失った。

川の真横にある坂道を走り抜けたのは、日ごろから鍛えているファラにとっても足には相当な負担だったらしい。標的を見失った瞬間、電池が切れるように草原に倒れ込んだ。足が痺れるほど痛いことに気づき、思い出したようにぜぇぜぇと息を切らす。体は言うことを聞かなくても、真上、上下左右、顔だけを懸命に動かしてあの鳥の姿を探した。

だけど、見つかるはずもなく、雫が頬を伝る。

「なーに、ベソかいてるんだよ?」

からかっていても分かるほど優しさのこもった声に、ファラは声をかけた人物を振り向いた。晴れた空の色の瞳が、声以上に心配な色でこちらを伺っていた。

「泣いてなんか…!」

噛みつくように言った言葉は思った以上に掠れていて、そこでようやく自分が泣いていたことに気づいく。

「どうした?」

ほら、いつも私が負けそうになるときに、そうやって私が勝てない言葉をリッドは使うんだ。

「青い鳥をずっと探しているの。…たぶん、私にとってすごく大事なものなんだと思う。なのに、いつもあと一歩のところで手が届かないだ」

それはまるで、実体のない幻を追いかけているようで。

青い鳥なんて、最初からいなかったようにさえ錯覚してくる。

リッドもファラと同じように、地べたに仰向けに寝っころがった。

「それ、ウソだろ」

「え?」

ファラがリッドに反駁する暇もなく、横から腰に手を回されて横抱きにされる形となった。疲れ切っている今のファラには、リッドを押しのける気力も残っていない。

「チャットが言ったろう。お前が探している鳥は、いつもお前の後ろに引っ付いて回ってたんだ。お前がバロールにいる時も、暗闇の中にいる時も、ミンツにいる時も、お前が気づかなかっただけで、いつもお前と一緒にいるんだ」

リッドの抱きしめる腕に一瞬力がこもる。ぎゅっと抱きしめられると、リッドはようやく手を放してくれた。解放されたと思った瞬間、今度は息がかかるほど顔を近づけて真摯にファラを見つめた。

「手が届かないんじゃない。その鳥は、とっくにお前のもんになってるんだよ」

空を映し出す瞳の中に、ファラが目いっぱい映し出される。

青い鳥と同じ瞳。同じ居心地の良さ。それはきっと、

「…―あの鳥は、リッドだったの?」

ようやくたどり着いた結論に、なんとか声を絞り出す。

驚くほどびっくりして、それと同時にすごく納得もした。

「そっか、リッドだったんだ。なかなか気づかなかったけど、リッドだったんだね」

気づかなかった自分が可笑しくて笑みをこぼすと、リッドは眉をひそめた。

「本当に、今の今まで全く気付かなかったのかよ?」

仲間の奴らだって、みんな散々ヒント出してたじゃねぇか。

訝しんだリッドに構わず、ファラはそのまま横から同じように彼に抱きついた。もう気力はほとんど残っていない。

「本当に、リッドを追いかけるの大変だったんだから」

「あのな、俺だって止まることなく駆け回るお前の後を、ついてくのはかなり大変だったんだぞ?」

「なら、おあいこだね!」

でも、と一旦言葉を止めて、リッドの胸にもたれかかった。

「私もう、追いかけるのは嫌なんだ。だから、リッドはずっと隣にいてね」

リッドを見失ってしまうほど、前にいかないでほしい。

支えてもらっているのに気付かないほど、後ろにもいないでほしい。

私がちゃんと見失しなわないで、いつも一緒だってことが分かるように、

ただ願うのは、隣にいてほしい、それだけ。

触れ合っている感触から、リッドと自分の体温がお互いに一気に上がっていくのが分かった。

 

 

 

 

 

 

青い鳥を追いかけた。

ずっとずっと追いかけていた。

けれど、見失ってばかりで、手も届かなくて…。

でも、違った。

私が気づかなかっただけで、青い鳥はいつも私の隣にいた。

これからもずっと―。

 

 

 

 



 

 

 

 

 

あとがき:

皆様、大変お待たせしました。がっつり小説を書くのは一か月ぶりでしょうか。

 

気づいた方もいらっしゃると思いますが、blogで途中まで連載している「青い鳥を空に」の対となる小説です。あちらがリッド視点のリファラ観だとすると、

こちらの話は“ファラから見たリファラ”ということになります。

 

そして、さらにお気づきかもしれませんが、ドラマCDの「青い鳥を探したら〜」の一節からこの話は始まりました。

「え?ファラ、青い鳥を探すところから始まるの?」とそれはもう突っ込みどころが満載でした(笑/主にリッドのために)そのファラに対する私なりの突っ込みが、この小説に盛り込めたら上出来だと思っています。

一応、たとえ話なので、解説は後日ブログにでも載せられたらと思っております。(あくまで予定です)

 

執筆:201291

 

 

 

 

 

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